猪名笹原

百人一首でも有名な「猪名野笹原」である。
かつて、この地には笹が茂っており、風が吹くと笹の葉同士があたり、わずかな音を出す。
この風情あふれる名勝地を短歌の題材に使ったのは、女流歌人の「賢子」(大弐三位)である。

有馬山 ゐなのささ原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
である。
有馬山と猪名(ゐな:万葉仮名)の笹原までは、歌のセット。歌は地域を入れることが多く、まずは有馬から猪名と笹原とどんどんと地域を狭めていっている。
風吹けば:現代と同じく「風が吹いたら」という意味
この歌のキモは、以下の部分
いでそよ:「いで」現代ではさぁ、といった意味に近い感嘆詞で「そよ」はそうよ!に近い感嘆詞。
そよのところがとても綺麗な韻で、「そよ」は笹が揺れる擬声でもあり、「そよ風」のそよでもあり、そうよの「そよ」であり・・・
「いでそよ」を際立たせるために、有馬山からの流れがある。
人を忘れやはする。:人(恋人)を忘れることができると思いますか?(できないですよ)
この裏には、忘れているのはあなたの方でしょ、と言う皮肉とも考えることができる。
さらに、笹の擬声と共に、自分が手紙をもらってソワソワしてしまっていることも表現していると考えることができる。
この短歌で読まれたように、笹原は名勝地であった。
Comments
So empty here ... leave a comment!